「びわこおおなまず」というタイトルに出会ったのはおそらく5才ぐらいの頃だ。
当時、母親が子どものためにと図書館で借りてきた本の中にあった1冊で、絵本の大きさだったと思う。
しかし、おぼろげな記憶の中にあるのはそのタイトルと、多分絵本だったという印象のみで、肝心の内容についてはまったく覚えていない。けれども、そのインパクトは強く深く心に残ってしまい、あるとき、ふとその記憶の真相を確かめたくなってしまった。
時代はインターネットが普及して久しい現代だ。大概のものはキーワードで検索すれば調べがつくというなんとも便利な時代。
けれども結果は、そんな絵本が出版されていた記録はおろか、ビワコオオナマズにまつわる伝説や言い伝えといったもののカケラすら発見することができなかったのである。
現代の情報技術とビワコオオナマズの知名度の両方に於いて、期待値が大きかっただけにこれは予想外だった。
それでは、私が5才のときに見た、あの本はいったい何だったのだろう。
現場に行こう。琵琶湖に行って調べてみよう。
という経緯で初めて琵琶湖を訪れたのは、2016年6月だった。
平日に2泊3日で琵琶湖周辺を散策し、琵琶湖の景色や自然を見て回った。
そして琵琶湖の主、ビワコオオナマズに会うべく琵琶湖博物館を訪れたが、残念なことに水族館が改装工事中で叶わなかった。
それでも古代湖である琵琶湖が如何にすごいか、そして琵琶湖周辺での生活や文化の歴史についての展示はとても素晴らしく、とても感銘を受けた。
海と見まごう広大な湖と周辺の山々の景色、そこに棲む多様な生き物、竹生島、段々畑、ヨシの湖岸…。
それらを組み合わせて、東京に帰ってからすぐに物語を書き上げたのだった。ビワコオオナマズのお話、それがどこにも無いのならば、作ってしまおう!という訳で、オリジナルの物語「琵琶湖おおなまず」は誕生したのである。
それから8年。
いつか私がもう生活のために仕事をしなくていいようになったら、なにかちゃんと形に残せるようにしようと思っていたその物語が、どうやら動き出すことになりそうなのです。
これはもう一度、琵琶湖に行こう。そうして2024年12月、どうにか2日ほど行方をくらますことができそうな日程を見つけてやってきました。
東京から新幹線で京都に向かい、そこからJR琵琶湖線で少し戻って草津駅へ。
一時間に1本のバスを乗り間違え(あるある)、途中下車ののちに徒歩1時間を覚悟して歩き出すもGoogleマップを頼りに本来の目的のバスに乗り継ぎ成功!
残り15分ほどの行程をバスに揺られて窓の外を眺めながら、これは歩かなくて良かったと思う。
行けども行けどもひたすら広大な畑の中、景色がなかなか変わらない。東京の下町を散策しながら歩くのとはてんで訳が違う。
しかし不思議に思ったのは、歩いている時から気になっていたその畑だ。遠目には雑草が生えているように見えたが、近くで見ると、どうも立ち枯れた枝豆のようであることがわかる。最初は人手が足りなくて収穫できなかったのがそのままになっているのかと思ったが、バスに乗ってみるとその光景は広範囲に広がっていることがわかったのである。
おそらく、漉き込んでやると肥料になるということなのかもしれない。が、今度何かの機会に調べてみよう。